【千秋楽】令和二年 春蘭お花見大遠征

いよいよ最終日です。昨晩、タッケさんとSさんにご挨拶させていただき、帰りはまたsharaさんとの二人旅に戻ります。すっかり馴染んだ部屋で荷物をまとめ、朝6時に宿を出発しました。

朝一は今回一番力を入れて候補地を絞ったものの、2日続けて芳しくなかったあの地域に三たび挑む事にしました。ここが駄目なら大きく移動するしかありません。

歩きやすい雑木林だった

歩きやすくて疲れが蓄積した最終日には優しい環境でした。このかんばしくない地域のなかでは十分に楽しめるポイントです。しかし、それなりの株立ちが数あれど、そういった株にはこれといった変わりはありません。花見そこそこに実生も気にしながら歩きます。

曙ボヤのような実生

落ち葉を払うと曙ボヤのような実生がありました。今回の旅ではとにかく花に集中していたせいか、久しぶりの感覚が疼きます。

見応えのある花もありました。肉厚でとても硬い円弁花です。虫食いが非常に残念です。またいつか撮影させてね!

春蘭の円弁花
虫食いされた春蘭の花

次の写真はsharaさんが持ってきてくれた切り花。大輪と言えそうなサイズのとても良い円弁花でした。

大きめの円弁花

これなら作をしても楽しめそうなのに今回は見るだけにしたそうです。

小一時間ほど散策するも普通の葉姿ばかりで集中力が切れてきます。そんな頃、sharaさんが歩いていくほうに立ち葉や硬めの葉など不思議と個性的な株が増えていくのに気が付きました。

どれくらいぶりだろう? またまた久しぶりの出逢いです。ヨレヨレの小苗ですが、散り斑を確認しました。

手前の2篠だけ散り斑
散り斑の拡大

この後、森を抜けた辺りで春蘭が少なくなりました。この辺りはクマも出るというのでいよいよ移動しようという事に。3日続けて挑んだこの地域でしたが・・、費やした時間の割には情熱の空回りだったのかもしれません。

車に戻ろうと踵を返します。気温が上がって来て喉がカラカラでした。早朝は涼しかったものですから飲み物を車に置いてきてしまったのです。自然が相手である以上、こういう気の緩みはあってはならない事です。。

早く車に戻りたい・・あれ?

sharaさんが道をそれていきます・・。車はそっちじゃないですよ〜と、水を飲みたいあまりにそんな事を思いながらsharaさんの後を追います。

二つ並んだ岩の向こうに立ち葉で葉変わり様の姿が目に入り、sharaさんも僕も林道から外れて足を踏み入れました。林床に蘭の姿は少なく、ジャノヒゲなど他の下草が多くなっていました。気になった個体はちょっと葉が硬い程度の小苗で、変わっているというほとではありませんでした。

二人で肩を落とし・・

ふと視線を落とすとすぐ足元に・・

実生が少しかたまっていた

危うく踏んでしまうところでした・・・

白い筋が見えた

まさかの縞だったのです。

外葉に目立つ縞が入っていた
実生一年生だった
中押し状にみえる葉も

柄を観察すると、繊細な線が織りなす散り斑状の縞という感じでした。かたまって出ていた約4個体にも柄がありましたが、とても地味でお見せできる写真がありません。

袴にも柄が見えた

今だから言えますが・・sharaさんが車の方ではなく道をそれたとき、僕は本気で

えーっ、そっちもう生えてないですよ〜・・

と、あまりの喉の渇きで寄り道に否定的だったのです(笑) sharaさんごめんなさい!!

まったくもってsharaさんとの縁なくしては成り立たない散策だと思い知る発見になりました。sharaさんが導き、僕がヘタれると何かある。何言ってんだと思われるでしょうが、本当にこのパターンが多過ぎました。

不発の多かったこの地域にも最終日には愛着が湧いて、ここから大きく移動します。

次は今回の旅で最も一か八かの地域に向かう事にしました。縞が見つかった事で、賭けに出る心のゆとりが生まれたからです。

・・・が、

大ハズレ!

早々に見切りをつけて後退します。sharaさん、貴重な時間をすみませんでした!

正午を過ぎ、帰宅時間を考えるとあと一か所くらいしか散策する余裕はありません。道中、都合のいい候補地はないだろうか? 今回、あまり気乗りしなくて少ししか調査してなかった地域があり、そこにちょうど良さそうなポイントがありました。

1時間以上かかって到着すると、ここ数日で歩いて来た地域とは環境がかなり変わりました。森に入ってすぐに、このポイントの蘭に個性がある事がわかりました。葉は肉厚で引き締まった様な個体が多く、期待が高まります。

肉厚で葉の表面には僅かながら荒れがあった

しかし・・意外と花付き株が少ないため、いまひとつ判断に迷っているとsharaさんが文句ナシの花を発見します。

春蘭の大輪の円弁花
青々とした円弁

このポイントは面白いぞ。なかなか花を確認出来なかったけど、sharaさんの見つけたこの花がそう語ってくれました。全部が全部ではないでしょうけど、ここの葉変わり様の草からはこんな花も咲くのだと勉強になりました。

堂々たる風格だった

次第に雨雲がかかってきました。日も暮れそうなため、そろそろ本当に帰らなければという雰囲気に。sharaさんが次来るときのためにまだ未開の部分を下見程度に流して歩きます。ざあっと地形を把握したところで、車に戻る事に。

「帰ろう」と充分に粘ったsharaさんが言いました。しかし、sharaさんが引き返して来た先がどうしても気になりました。

「そこ、見なくていいんですか? せっかくだからザッと見ませんか?」と、珍しくヘタレながら僕が言いました。最後だからsharaさんにもっと発見してもらいたいという想いがありました。

そしてsharaさんが向き直ったときです。

「あった!!」

sharaさんはそう言ったと同時に膝をつくとその個体を覗き込みました。僕は全然気が付きませんでした(笑)

輝いていた!

なんだこれは・・!

ナマズ斑とは違うぞ・・! いや、ナマズ斑も合わさっているかもしれないが、今まで見てきたナマズ斑とは比べ物にならない鮮やかさでした。

光っているような明るさだった

日焼けでもない・・埋もれすぎでもありません。写真では伝えられていませんが葉先もほんのり明るかったのです。

日焼けでもなかった
動画です。音声あり

今回、度々山のなかで春蘭ではない別の植物の明るい出芽にたぶらかされたので、sharaさんと「また春蘭じゃないんじゃあ、あるまいな」と笑ってしまいました。

車に戻ると雨が降って来ました。

昨年と同じように今年も最終日はsharaさんが柄物を発見。お互いきっと悔いを残さず…歩き納めることが出来たと思います。

・・いま思い返しても、本当に夢だったのではないかというくらい、魔法のような日々でした。

今年も出発前に様々な不安要素があり、また、相変わらず実績も情報もない未開の地での計画だったのに志しを共有してくださったsharaさん、本当にありがとうございました!

そしてタッケさん、Sさん、楽しい時間をありがとうございました! またよろしくお願いします!

みなさんお疲れさまでした!!!

どうか来年も楽しいお花見が出来ますように・・穏やかな日常に戻りますように・・・。

ご笑蘭ありがとうございました。

山の神さま 山を歩かせていただきありがとうございました。

【千秋楽】令和二年 春蘭お花見大遠征” への4件のフィードバック

  1. 外出自粛の日々、今の楽しみは日に何回となく入る蘭の小屋。
    3回の投稿完結、楽しく読ませていただきました、縁の奥の深さを実体験できた遠征でした。
    今回のハイライトは何といっても山歩きの大先輩タッケさん・Sさんと時間を共有できたこと!
    実績のある方との山歩きは無尽蔵のエネルギーを引き出してくれます。老いを忘れ夢中になって蘭を探しました。また再開できることを楽しみにコロナと向き合っています。

    1. sharaさん
      あらためて今年もありがとうございました!お疲れさまでした!
      ほんとに不思議な縁を体験させていただきました。全然違う感覚が交差するときが面白かったですね。
      sharaさんは日に何回小屋に行っても楽しい事と思います(笑) 最後の発見の曙系は何時間でも眺めてしまいそうですね!
      まさにハイライトでしたね!タッケさんSさんとお会い出来たときは興奮しましたね!
      また来年もよろしくお願いします!楽しみにしております!

  2. 山行きの楽しさがこちらにも伝わってきました。収穫もあり、忘れられない旅になりましたね。

    1. ゴリョウさん
      見てくださったのですね!嬉しいです。ありがとうございます!この旅は忘れられません。ひととの縁の大切さを学びました。いまも不思議な気持ちになります。作花が良く咲いたらお土産持って行きますので!

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